連作障害の回避

「連作のすすめ」。にんにく栽培では連作障害に悩むより、連作を続ける方策を考えるべし。

1.連作障害のメカニズム

連作による病原菌の増加

 同じ畑に同じ作物を毎年作り続けると、連作障害で作物の生育や品質がわるくことがあります。
 2年目までは順調に収穫できたが、3~5年目に生育不良に陥ることがあります。
 連作障害の原因は大別すると、「土壌伝染性の病害」「生理障害」「植物由来の毒素によるもの」の3つがあると言われています。
 連作障害と科学的に向き合い、連作障害をいかに回避するかが問われています。。

土壌伝染性の病害

 同じ野菜を作り続けているとその野菜を養分とする病害虫が繁殖し密度も増し、やがて障害が発生してしまうのです。
 一方で、植物は根から微生物の餌となる有機酸や糖、アミノ酸などを分泌しています。同じ科の植物は似た物質を分泌するため、連作するとそこに集まってくる微生物の種類も偏ってきます。
 そのため、生物の多様性が崩れ、特定の病原菌だけが増えていき、土壌病害が発生しやすくなります。

生理障害

 野菜は成長する際に、それぞれ必要とする土中の成分の量が異なります。同じ野菜を作り続けていると大量に必要とする成分は不足し、さほど必要としない成分は過剰となります。
 結果、特定成分のアンバランス化により、生理障害が起きてしまいます。

植物由来の毒素によるもの(自家中毒)

 植物のなかには自分の根から他の植物の成長を抑制する物質を放出するものがありますが、この物質の濃度が高まることにより自らも自家中毒をおこし生育障害を引き起こす。

2.連作障害を抑える方法

太陽熱による土壌消毒
輪作のローテーション例
連作障害を回避する様々な技術

 昨今では、連作障害の原因やメカニズムの研究が進み、それを回避する技術も幅広く開発され進化しています。
 中には時代にそぐわない方法や、大掛かり過ぎて、家庭菜園では採用できない方式もあります。

接木苗

 苗は接木苗をが当たり前になっています。台木が病気に強い接木苗を使いましょう。

有機物の投入

 完熟堆肥などの有機物を投入します。これにより、土壌中の有用微生物の密度を高め、微量要素の補給を行います。

 野菜を植える前の土作りの段階や、収穫を終えて一度畑をならす際に土壌改良を行う。
 土壌改良の意味は、堆肥や腐葉土、化成肥料などを組み合わせて土壌の環境を整えることです。

酸度調整

 にんにく栽培に合った土作りをするようにします。
 日本は雨が多く、放っておいても酸性土壌になりやすい環境です。
 栽培前には必ず苦土石灰を入れるなどして、酸度を調整しておきます。

輪作

 同じ場所で同じ野菜を続けて作らずに、異なる科の野菜を順番に作っていく「輪作」を行うことです。
 違う科の野菜を作ることで、土の中の環境が偏らず、土壌生物相・微生物相が豊かになって、連作障害が起きにくくなります。にんにくの栽培は連作可能です。

間作・混植

 順番に違う科の野菜を作る「輪作」を同時に行ってしまおうというのが、複数の野菜を一緒に植える「間作・混植」という方法。
 間作は、作物と作物との間に他の作物を植える方法。混植とは株間などに他の作物を混合栽培する方法。
 また、近くに植えることで、病害虫の発生を防いだり、生育が良くなったりと、お互いに良い影響を与える植物を「コンパニオンプランツ」と呼びます。

青刈作物の導入

 野菜作付けの合間に青刈作物を栽培し、そこで得られる有機物を土に鋤き込みます。
 青刈作物とは、茎葉を飼料として利用する目的で栽培するもので、種実のできる前に刈り取ります。
 ソルゴーやトウモロコシ、麦類など、茎葉の生育が旺盛で有機物を多く確保できる作物がオススメです。

畑を休ませる

 土を休ませておくと、やがて雑草が生え、微生物がそこで生態系を再構築し、自然の状態へと戻っていきます。
畑を休ませるときは、根粒菌といって土壌に窒素を固定する微生物を共生するマメ科(クローバーなど)の植物などを植えっぱなしにしておく。

天地返し

 畑の土を入れ替える作業で、深さ30センチほどの表土とその下の30センチほどの土を入れ替える

土壌消毒

 地植えの場合は、その場所を太陽熱消毒するのがおすすめです。農薬による土壌消毒は、微生物や善玉菌なども皆殺しにするので使わない。
 にんにくを収穫した後、夏の間に土の上からフィルムをかぶせて、風などでめくれないように端に土や石を載せて重石をしておきます。
 夏の強い日差しの下、フィルムに覆われた部分の土は高温になり、低くても40℃、できれば60℃ほどで約10日間放置しておくと、土の中に残った菌を殺菌でき熱消毒することができます。

3.連作の効用

立派に成長しているにんにく
にんにくは連作障害に比較的強い

 ネギやにんにくは連作障害があまり出ないといわれています。それは、アリインと言う硫黄化化合物を含み、それが参加すると抗菌性の強いアリシンが生成され、そのおかげで病原菌に強い性質を持っていわけです。
 連作障害に強いといわれるにんにくでも、連作の3年以降に生育が悪い状況に陥ることが多々あります。

連作障害の出にくい野菜

 連作障害が起きにくい野菜として、
アスパラガス カボチャ クウシンサイ サツマイモ シソ ズッキーニ タマネギ トウモロコシ ニンニク ラッキョウ
等があります。

連作は究極の栽培技術

 連作の影響がほとんどない作物もあれば、連作すると品質が向上する作物もあるという。
 例えば、サツマイモ、カボチャ、タマネギ、ニンジン、大根などがあります。

連作には弊害があるが効用もあるという

 農作物は種類によって、適した条件が異なります。そのため、生産者は作物の生育の良い土壌条件に合わせて土地作りをします。こうして出来上がった土地は、同じ作物の栽培には適しますが、異なった作物には不向きになります。

発病衰退現象が現れる

 連作の効用によって、連作当初は土壌病害虫が発生して農作物の生育が悪くなります。
 ところが、生育が悪くなった農作物をさらに連作すると、病害虫のどによる連作障害が少なくなり、病害が激減し収量が増加する発病衰退現象が現れるという。

4.家庭菜園における「にんにく」の連作障害の回避

にんにくの収穫
木嶋利男 監修
にんにくの連作だと

 にんにく栽培は、比較的連作障害を受けにくい作物であり、大掛かりな連作障害対策などしないで、発病衰退現象が現れるよう工夫をする方法もよいのでは。

家庭菜園では

 家庭菜園では、農作物を大量に栽培する必要が無い。畑の広さも比較的狭い。出荷するわけではないので、形状にこだわる必要もない。できる範囲でにんにくに合った土作りを続けるとよいのでは。

土壌微生物の働きを借りる

 連作をすると、連作障害が発生しない土壌となったり、発病が衰退する現象が見られるという。この要因として、土壌微生物の働きがあるという。
 連作を重ねることにより、作物が安定的に生産できるようになるという。底には、作物自身が持つ環境への適用性と、土壌微生物の働きが大きい。

有機物の投入による土壌微生物の活性化

 堆肥の種類によって、微生物が異なります。多様な微生物が必要なので、多様性のある堆肥を投入します。
 肥料も、微生物の活性化のとって有効な、ボカシ肥など有機質肥料が有効となります。
 にんにくにも連作障害はありますが、青森県の生産者は、一般的に連作をします。数年の連作では、連作障害が問題となることは、ほとんどありません。むしろ、毎年堆肥を投入し、リン酸分や石灰分の施用など、土壌改良を続けていった方が収量性が高まってくるからです。